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研究開発
広汎性発達障害の診断・治療・経過観察総合システムの開発
研究代表 金沢大学医薬保健研究域医学系 教授 三邉義雄
U R L http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med20/aisatsu/pages/list.html
参画機関 金沢大学大学院医学系研究科神経精神科・神経内科、金沢工業大学先端電子技術応用研究所、東京大学先端科学技術研究センター、株式会社島津製作所、横河電機株式会社
研究概要
 広汎性発達障害(ASD)においては、幼児期における早期の介入が予後に大きな改善をもた らすことが世界的に報告されつつある。さらに、これまでの金沢大学の研究から特定の物質が ASDの一因であることが判明し治療応用が進められつつある。早期診断のメリットが強調され る一方で、幼児において客観的で有効な脳機能画像診断方法がこれまで無かった。有望視されて いる脳磁計(MEG)と近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)は、自制が長時間保てない幼児期 においても、臨床応用が可能になりうる脳機能検査方法である。
そこで今回の研究の主な目的は、
①広汎性発達障害の早期診断を実現するバイオマーカーとしての幼児用MEG-NIRSマルチモダリティ脳機能計測装置の開発と臨床応用を進める。
②広汎性発達障害の早期診断、治療の経過観察に有効な解析方法・診断プロトコルを開発し、臨床上の有効性を検証し、脳機能計測の基礎研究への還元も進める。
以上を組み合わせて世界に先駆け広汎性発達障害の早期診断のための脳機能評価システムの確立を本研究の最終目標とする。
研究成果
1. MEG、NIRS 同時計測を可能にする要素開発:MEGへの影響を与えないNIRS用のファイバー先端部の材質をもちいて、 MEG、NIRS同時計測を可能とする薄型ファイバー(厚さ5o)を開発しMEG、NIRS同時計測を可能とする統合試作 機を作成した(図1)。実際に世界初となる多チャンネルのMEG・NRISによる幼児の同時測定が可能となった(論文投稿中)。

図1

2 . MEG同時測定のための幼児用NIRSヘッドギアの改良:子供にとって不愉快にならないように、簡便に薄型NIRSファイバーを装着できるように考案された、後方から毛髪をかき分けるスタイルのカチューシャ型幼児用NIRSヘッドギアを開 発し意匠登録した。図1に示すように、MEGと頭部のわずかな間隙に装着可能。
3 . 幼児計測に特に有効な、頭部移動に対するトラッキングなどの信号処理の試み: MEGの追跡型バーチャルセンサーシステムの試作をした。赤外線カメラによる頭部移動に対するトラッキング信号抽出と、信号処理ソフトウエアの試作が完了した。現在、精度の検証と、精度を上げるための改良を行っている(図2 )。

図2
4 . 健常幼児において実行可能な、短時間の刺激課題を実現し、 MEGをもちいて触覚および聴覚の一次感覚野に生じる脳の活動を捉えることが可能になった。まず音声に対する脳の反応の大きさは、幼児の言語発達に関係していることを見出している(論文作成中)。次に視覚情報などへの共感により、触覚刺激への脳の反応が変化することが捉えられるようになってきている(論文作成中)。NIRSにおいては、人の動きに反応する幼児の脳の血流反応の記録も可能になっている(論文投稿中)(図3 )。

図3
5 . より幼児に優しい脳検査機器を目指し、MRI撮像なしに、頭表の形から脳の形状を予測するシステムを構築中である。現在のアルゴリズムの精度を高めることでMRIなしでも、脳機能の解剖学的局在を一定の誤差を許容しつつ視覚化することが可能になる。現在このシステムを構築するべく、基礎データベースとなる幼児のMRIデータの収集を金沢大学小児科と合同で進め、アルゴリズムの検討と誤差範囲の確認を進めている(図4 )。

図4
事業化への展望
 本研究の成果は大きく分けて3 つの製品化・事業化につながる。
第一に、研究と臨床の両方に最適化されたNIRS-MEGマルチモダリティ脳機能計測装置の製品化。第二にそれを利用した広汎性発達障害の診断・治療・経過観察総合システムの製品化。第三に 広汎性発達障害の早期診断支援システムを用いた臨床支援事業である。特に同時測定のテクノロ ジーが確立されれば、生理学的に新規な情報が加わることが期待され、臨床用機器としての発展が 期待される。

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一般財団法人 北陸産業活性化センター