研究開発
血液中の有核赤血球の回収・DNA分析システムの開発
研究代表 |
金沢医科大学FDD-MBセンター センター長 高林 晴夫 |
U R L |
http://IDM-World.com/FDD-MB/ |
参画機関 |
金沢医科大学FDD-MBセンター、北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科、金沢工業大学 情報フロンティア学部生命情報学科、財団法人 石川県予防医学協会、浅ノ川総合病院、エスシーワールド株式会社、株式会社スギノマシン |
研究の目的
我々が独自に開発したDNA分析システムの改良を重ねて、さらに性能を向上させ、お母さん(母体)と赤ちゃん(胎児)に危険のない最先端の胎児DNA分析システム(
Fetal DNA Diagnosis from Maternal Blood:FDD-MB 3.0 )の実用化を進めています。これを臨床応用することで、今までの検査方法にあったお母さんへの肉体的・精神的負担や、赤ちゃんが流産するリスクを完全に避けることが可能になります。また、妊娠の初期で赤ちゃんのDNA情報が安全に得られることから、今後はいくつもの赤ちゃんの病気について、効果的な早期治療の開発が期待できるようになります。
研究開発内容
母体の血液中に胎児細胞が移行していることが知られるようになり、胎児細胞が女性の健康へ関与することや、安全な胎児DNA分析法の開発に強い関心が寄せられ、それら胎児細胞を選択的に回収しDNA分析をしようとする試みが、国内外の研究グループによって現在盛んに行われています。
母体血1ml 中に1 個程度しか存在しない胎児細胞を確実に、効率的に回収することは、安全な胎児DNA分析には不可欠な技術です。我々は母体血中に移行する胎児細胞の特徴に着目し、独自の手法により胎児細胞(有核赤血球)を選択して回収する方法を確立して、その細胞1個からのDNA分析が可能であることを明らかにしてきました。それらの成果を踏まえ、日本発で世界初の、実用レベルの最先端となる安全な胎児DNA分析システム(
FDD-MB 3.0)を完成させる予定です。なおこの分析システムの開発は、これまでに培った石川・富山および国内外の研究機関・医療機関との連携を生かして、
all Japan 研究開発体制で進められます。
欧米では、大規模な臨床研究(米国NIH の
NIFTY study 等)が巨費を投じて行われましたが、従来の方法(抗原抗体反応)の限界から、開発が頓挫してしまいました。一方、我々が独自に開発したパーコール/マイクロマニピュレーションを用いた、安全な胎児細胞回収・分析システム(
FDD-MB )は、安定で有用な手法であることが国内外で高く評価されており、このシステムが日本発・世界初の実用化・事業化へ向けて最短に位置しているといえます。最終的に、この先端的DNA分析システムが実現すれば、胎児の救命や早期治療の促進ばかりでなく、赤ちゃんを育む女性の健康増進・疾病予防等へも波及効果が期待できます。これは、本邦の医療サービスの充実に貢献するばかりでなく、医学・医療に世界的な変革と経済効果をもたらすことが期待されます。
事業化への展望
現在、出生前検査は世界で年間約500 万件が実施されており、安全な出生前検査であるFDD-MB システムが実用化すれば、世界市場において高い占拠率を占めることが想定されます。
本研究開発は、周産期医療、DNA 医療に大きな変革と貢献が期待できるものであり、女性の健康に資するために、われわれの要素技術を臨床応用するために、より一層の実用最適化を目指しています。また、研究開発と並行しながらエスシーワールド(株)ほかの連携企業とも協力して事業化の準備を進め、平成22年度には検査サービスの開始を目指しております。また、分析システムおよび試薬キットなどの市場への投入を合わせて推進します。
将来的には、いしかわ大学連携インキュベータをはじめとする国内拠点と、立地、アクセス等の条件を考慮しながら海外に複数拠点を展開し、世界レベルでのクラスター形成・ビジネスモデル構築を主導して参ります。
