研究開発
アミノ酸メタボロミクスのための酵素チップの開発と診断・予防への応用
研究の目的
フェニルアラニン脱水素酵素等を固定化した実用デバイスを作成し、簡便なアミノ酸定量方法を確立する。新しいアミノ酸代謝酵素をチップ上に搭載し、各種アミノ酸濃度の測定を可能にする。定量したアミノ酸データを従来のアミノ酸分析法でのデータと比較して各種疾病管理に適用する。一方では、食品成分の作用メカニズムおよび代謝様式を解明することにより、個々人の遺伝子型および生活習慣に応じた機能性食品開発のための基盤となる研究を展開する。
研究開発内容
血中の単一アミノ酸の濃度をマーカーとする疾病診断が行われている。酵素を用いる診断法は、安価で簡便な方法である。一方、血中アミノ酸異常を検出することは、一般人の日常の健康管理においても、重要な項目になることが予想されており、家庭でも検出できる簡易型デバイスの開発が求められている。そこで新生児血液中のフェニルアラニンやメチオニン等の定量用デバイスを作り、それらの有用性を検証する。また、血中の個々のアミノ酸濃度の多変量解析を行うことにより、アミノ酸の濃度を複合的に捉えた数値「アミノインデックス」が一種の疾病のマーカーとなり、疾病と関連付ける研究が成功しつつある。「アミノインデックス」から疾病を診断するため、より多数の血中アミノ酸濃度を簡便に測定する方法の開発が強く望まれている。そこで、多種類のアミノ酸の酵素定量法を開発し、疾病診断の簡便なデバイスとして集積化する。
一方では、安全かつ優れた効能を有する機能性食品を効率良く開発するための評価システムを開発する。食品成分の作用メカニズムを解明するシステムおよび代謝予測システムを構築し、個々人に適合したテーラーメイド食品の概念を実現する。最新の技術を導入することによりこの2つのシステムの構築を行う。
事業化への展望
味の素(株)では各種疾患患者のアミノ酸データを取得し、疾患の早期発見や病態のモニタリングにアミノ酸データが有効であることを示す臨床試験を並行して実行しており、一部の疾患では有効であることの確証を得ている。今後もメタボリックシンドロームなどの個別化健康管理で最も重要かつ大きな市場となる分野での臨床研究を進める予定である。アミノ酸分析酵素チップは既存のアミノ酸分析計の代替として、商品化が可能と考えられる。また、サントリー(株)と(株)廣貫堂と連携しながら機能性食品の開発および商品化を推進する。
