文部科学省 地域イノベーション戦略支援プログラム 富山・石川地域
    English

ほくりく健康創造クラスター
サイト内検索 google
研究開発
個の免疫医療システムの開発
研究代表 富山大学大学院医学薬学研究部免疫学 教授 村口 篤
U R L http://www.med.u-toyama.ac.jp/immuno/index.html
参画機関 富山大学、金沢大学、三重大学、富山県工業技術センター、エスシーワールド株式会社、ビバリストヤマジャパン株式会社、北陸電気工業株式会社、愛知県がんセンター
研究概要
  本研究は、個々の患者の免疫機能の診断及び患者の免疫力を増幅させ治癒力を高める「個の免疫医療」を推進していくために、患者の血液あるいは病変部からウイルスやがん特異的なリンパ球およびその抗原受容体を迅速に同定するシステムを開発し、その臨床応用を推進することを目的とする。
これまでに、?患者の血液からウイルスや癌特異的なTリンパ球を検出し、そのリンパ球から抗原受容体(TCR)を回収し、10日以内にその抗原特異性を検証できるシステム(hTEC10)を開発した。?臨床応用として、それらのTCRを発現させたヒトTリンパ球が、in vitroでウイルス抗原を提示した標的細胞やがん抗原を発現した標的細胞を特異的に殺傷することができることを示した。
本研究成果は、感染症やがん等の治療における「個の免疫医療の開発」に大きく貢献することが期待される。
研究成果
 

1.抗原特異的T細胞の迅速かつ網羅的検出・作製システムの開発

 個の免疫医療を推進するためには、個々の患者の免疫機能を迅速に解析し、その機能を効果的に増強することが大切である。我々は、免疫細胞の中で、ウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、殺傷する機能を持つT細胞に注目し、そのT細胞を迅速かつ網羅的に検出するシステムを構築した。その結果、10日間で、抗原特異的T細胞を検出し、その抗原受容体(TCR)を取得し、機能を検証できるシステム(hTEC10システム)を構築することができた(図1)。hTEC10システムの効果を、実際のヒトリンパ球を用いて検証するために、EBウイルス特異的T細胞の検出及び、そのTCRの作製を試みた。EBウイルスは日本人の大部分の健常人で不顕性感染していることが知られている。我々は12人の健常人ボランティアの末梢血リンパ球の中からEBウイルス特異的T細胞を検出・回収し、hTEC10システムを用いて、そのTCRを回収し、EBウイルスに特異的なTCRが取得できるかを解析した。全体で1277個のT細胞を回収し、428個のEBウイルス特異的TCRを取得することができた。そのTCRの遺伝子をヒト末梢血T細胞に導入することで、導入されたT細胞がEBウイルスペプチド特異的に標的細胞を傷害することも確認できた。


図1 抗原特異的T細胞検出・作製システム


2.がん患者からのがん特異的T細胞の網羅的検出・作製

 次に、我々は、hTEC10システムが実際にがん患者のリンパ球の中からがん特異的T細胞を効率よく検出することができるかを検証した。ペプチドワクチンで治療中の肝細胞癌の患者よりhTEC10システムを用いて、がん特異的T細胞を検出し、そのTCRの機能を解析した。 2 人の患者のリンパ球より270個のT細胞を回収し、202個のがん特異的TCRを取得できた。図 2 は、一人の患者の例を示してある。すなわち、患者リンパ球より、73個のがん特異的TCRを取得し、それらが 3 種類のTCRに分類されること(図 2 上)、さらに、そのTCRを発現させたT細胞がペプチドワクチン特異的に肝がん細胞を傷害することを確認した(図 2 下)。 

TEC10システムは、今後、個の免疫医療に大きく貢献すると期待される。


図2 がん患者由来がん特異的T細胞の網羅的検出




▲ページの先頭へ


一般財団法人 北陸産業活性化センター