文部科学省 地域イノベーション戦略支援プログラム 富山・石川地域
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ほくりく健康創造クラスター
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研究開発
医工融合による動脈硬化の診断と治療の先導的研究/血管病変部位の治療
研究代表 金沢工業大学ゲノム生物工学研究所 教授 松田武久
U R L http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/gbl/index_ja.html
参画機関 金沢大学医学部心肺外科(渡邊剛教授)及び循環器内科(山岸正和教授)
金沢工業大学人間情報研究所(小木美恵子教授)
研究概要
自己化を獲得するバイオインターフェースの構築と治療デバイス
・ 人は血管と共に老いる。小口径の血管(冠状動脈や頚動脈)は生命維持の重要なるライフライ ンで、動脈硬化や血栓が形成されると狭くなり、ついで閉塞して死に至る。内科的治療(投薬など)が有効でない病変血管に対す る治療は血管内にステントを挿入・留置して狭くなった部 位を拡張する(経皮的手術)、あるいは小口径人工血管による外科的置換手術が行われている。
・ 前者の最新のステントは薬物放出する機能が付加されており、比較的高い開存率が得られてい る。一方、小口径人工血管(内径6 o以下)は、長年の研究に関らず臨床応用できるものはない。いずれも人工物は異物であるの で、恒久的な非血栓性はなく、その開発が希求されている。
・ 血管の恒常性は非血栓機能を有する内皮細胞の単層が被覆されていることによる。近年の研究で内皮細胞の前駆体が骨髄より 流血中に流出し、循環していることが見出されている。この前 駆細胞を流血中で留置及び置換デバイス表面で捕捉することが出来れば、増殖した内皮細胞に よって表面が被覆され、血管と同等の非血栓性を表現できることになる。(作業仮説)
・本研究では、
(1) 内皮前駆細胞の高選択捕捉と内皮化を誘導する“アクティブバイオインターフェース”の設計概念の提案と構築
(2)ステント及び小口径人工血管の血液接触面への搭載
(3)動物実験(ブタ)による実証実験
研究成果
1.マトリックス設計
 流血中に浮遊する大量の接着細胞(血小板、白血球等)の接着を阻害し、且つ微量に存在する血管内皮前駆細胞のみを選択的に捕捉する マトリックスとして、 内皮細胞表層に特有に発現しているレセプター群と表面に化学固定した、そのリガンドあるいは抗体と組み合わせて、細胞接着・分化・ 増殖挙動の実験を行った(図1)。表面固定化するタンパク 質として、内皮細胞増殖因子(VEGF)が最適であることを結論した。タンパ ク質の固定はマトリックスコーティング層としてポリビニルアルコール共重合体を選択した。

図1  高密度VEGF固定化マトリックス上でのヒト単核球の培養
( 培養期間7日 緑:VRGFレセプター染色 青:核染色)

2.コーティング技術
・ ステント(ニプロ社供与)に関しては、超音波スプレーアトマイジング装置を使い、最適コーティング条件下で均一に薄膜が形成できた。ステ ント拡張しても亀裂及び剥れはなかった(図2 )。
・ 小口径人工血管は自家製の高電圧紡糸装置(electrospinning)を用いて人工血管(内径 3 〜 5 o)(図3 )を作製し、上述のポリマー溶液 を内腔に流し込み薄膜形成した。
・ いずれのデバイスも表面をカルボジイミダゾールで活性化した後にタンパク質溶液と接触させて、高密度VEGF固定化デバイスを作製した。

図2 ステントへの均一薄膜コーティング 図3  高電圧紡糸技術による小口径人工血管の内膜面薄膜コーティング

3.動物実験
・ 造影装置等を装備した大型動物手術室を拡充・整備し、2009年12月より留置・埋植実験を開始した。
・ ブタ冠状動脈にステントを留置し、頚動脈に人工血管を2 日〜 2 週間埋植した後に摘出し、光学 顕微鏡・走査型電子顕微鏡、及び 核染色及びCD34抗体を用いる免疫染色 による螢光顕微鏡による観察を行った。
・ ステントでは、移植早期では細胞付着は極めて少なく、2 週間ではステント表層を覆う内膜肥厚がみられた(これに関してはステン トの拡張による組織損傷の可能性が大きいと推定)。一部分CD34陽性細胞が観察された部位がみられた。
・ 人工血管(内径3.7o、長さ3 p)では、移植早期では一部分血栓形成、2 週間では全例血栓閉塞した(n=10)。想定されていた ように、血栓形成を阻止する抗凝固剤、へパリン、の徐放棄能の組み込みが必要であると考えている。一方、内径5.5o、長さ6 pの 人工血管を腹部大動脈に埋植したものは開存し、血栓形成が一部分にみられた(n=1)。
・ ブタEPC又は内皮細胞を特定する抗体はCD34しかなく、VEGFによる流血中のEPC捕捉・内皮 化の高い信頼性のある実験結果は現在まで なく、作業仮説は検証できていない。
事業化への展望
1 ) 脳健診の事業化:
高齢化モデル地域における本研究から有用な脳健診システムを確立する。国レベルでの高齢化社会対策の1つとして脳健診が事業化 され、一般健康診断にリンクする形での実施が推進される。

2 ) 認知症早期診断機器としてのMEG検査の事業化:
患者への時間的、身体的負担が軽く、施行が容易なMEGは、認知症早期診断機器としての有用性が証明されれば、今後の普及が見込ま れる。地域内企業との共同研究により、MEGを利用した認知症早期診断システムの事業化を促進する。

3 ) 改良型タッチパネル:
簡易的に認知症あるいは軽度認知障害を判別する機器としてタッチパネルは有用である。我々の開発したシステムは、認知症、軽度 認知障害および健常者から得られ たデータに基づいて開発されており、総合的認知症診断機器の一つとして他の同様なシステムから差別化される。

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