文部科学省 地域イノベーション戦略支援プログラム 富山・石川地域
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ほくりく健康創造クラスター
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研究開発
天然薬物の免疫制御を活用した医薬品シーズの開発
研究代表 富山大学大学院医学薬学研究部 客員教授・
富山県薬事研究所 所長 高津聖志
U R L http://www.pref.toyama.jp/branches/1285/1285.htm
参画機関 富山大学、富山県薬事研究所、協和発酵キリン株式会社、株式会社池田模範堂、池田薬品工業株式会社、救急薬品工業株式会社、株式会社 廣貫堂、ダイト株式会社、テイカ製薬株式会社、東亜薬品株式会社、東興薬品工業株式会社、日医工株式会社、株式会社 富士薬品、株式会社 陽進堂、リードケミカル株式会社、クラシエ製薬株式会社、富士化学工業株式会社、明治薬品株式会社
研究概要
 

天然物はこれまで数多くの医薬品開発の元となっており、天然物または天然化合物をリード体とした化学合成誘導体が医薬品として使用されている。古くから天然薬物には免疫賦活作用や免疫抑制作用があることが知られており、免疫系は天然薬物の重要な標的の一つである。本研究では、天然薬物ライブラリーを活用し、免疫系の制御や代謝異常を予防する化合物を探索し、アレルギーやリウマチなどの免疫疾患や代謝異常の克服に有効な医薬品や健康食品素材の発掘と製品化を目指す。また分子レベルで天然薬物の薬理作用を解析し、免疫病や代謝異常症などに対する新規治療法の開発を探索する。さらに、県内製薬企業と連携し、既存の天然薬物・和漢薬をベースとした新規治療薬開発コンセプトの提起、さらに有用な改良漢方方剤の開発、新規適応症の開拓や、機能性食品素材の開発等へと展開することを目指す。


研究成果

免疫系または代謝系を制御する天然薬物や化合物を探索するために、 9 つの一次評価系を確立した。天然資源・合成化合物(計1564個)を用い、一次評価を開始し、のべ79個の候補サンプルを得た。さらに動物モデルを用いた二次評価を行い、候補サンプルを絞り込むと共に、有効天然物の誘導体合成を進めた。以下に代表的な結果を記す。

 

1.感染症・敗血症を標的とした天然薬物の探索:

(1)自然免疫系を活性化する新規TLR4リガンドを見出した。アジュバント剤としての開発を目指し、誘導体合成を進めている。
(2)生薬甘草由来成分がTLR4の活性化を細胞及び個体レベルで阻害すること見出し、欧文論文発表を行った(図1)(Honda H et al. J. Leukoc. Biol., 2012)。
(3)また当該成分がインフラマソームの活性化を阻害することも見出し、特許を出願した(特願2012-247766)。



図1


2.アレルギー疾患を標的とした天然薬物の探索:

(1)IL-5/Venusノックインマウスを用いたIL-5産生評価系を確立し、評価系について特許を出願すると共に、欧文論文発表を行った(特願2009-177159, Ikutai M et al. J. Immunol., 2012)。
(2)カテキン類に比較的強いIL-5産生抑制効果を見出した。
(3)また当該カテキン類がIgE産生を細胞及び個体レベルで阻害することを見出した。抗アレルギー薬のシーズ候補として今後の開発が期待される。

 

3.がん・悪性腫瘍を標的とした天然薬物の探索(図 2 ):

(1)免疫抑制因子(TGF-βまたはPGE2)による活性化NK細胞の細胞障害活性の抑制を測定する評価系を確立した。
(2)白樺樹皮に含まれるベツリンが、免疫抑制因子によるNK細胞の細胞障害活性の抑制を解除することを見出し、作用機序の一端を明らかにすると共に特許を出願した(特願2010-083639、特願2011-066087)。
(3)ベツリン28位の水酸基の化学修飾によりベツリンと同等以上の活性を有する誘導体を創製した。



図2



4.生活習慣病を標的とした天然薬物の探索:

(1)植物性アルカロイド類がIL-1βによる細胞死を阻害することを見出した。
(2)Toll様受容体RP105によるメタボリック症候群の発症機序を解析し、発症に関わるシグナル伝達経路の一部を明らかにした。特許を出願すると共に、研究成果を欧文論文として発表した(特願2010-147034, Watanabe Y et al. 2012)。

 


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